奥穂高岳 2010.07.10-11 2日目

2日目
涸沢→ザイテングラート→穂高岳山荘→奥穂高岳

午前4時に起床、多少の肌寒さは感じたが、まあ快適な部類でしょう。Kさんはまだ寝ているが、腹が減って仕方がなかったので自分の分だけ朝食の準備を始める。外に出ると、雲ってはいるけど高曇り。周囲の山は全て山頂までが見える状態。これなら悪くはないな。



マルタイラーメンに、今回はKさんのアドバイスで餅を入れてみた。うん、うまい。
食べ終わってまったりしていると日が登り、穂高の嶺がモルゲンロートに染まる。急いでカメラをもって撮影ポイントへ。

会心の一枚

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常念岳の影もくっきりと映っている。

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モルゲンロートはものの3分程もあっただろうか、ほんの数分後には何の変哲もないもとの姿に戻ってしまった。きっと太陽が雲の合間に出たほんの一瞬だけの輝きであったのだろう。そこに立ち会えたことに感謝。

テントに戻るとKさんが目を覚ましていた。が、なんか様子がおかしい。聞いてみると高山病で頭痛がひどいらしい。う~ん、こればっかりはどうしようもないですしね、とりあえず朝食を作ってあげた(なんて優しい!)。Kさんは幾分元気を取り戻し、頭痛薬を飲んだらだいぶよくなってきたらしい。

4時30分出発の予定だったが、結局6時に出発となった。
当初は奥穂高岳から吊尾根を通り前穂を経由して岳沢へ下山する予定だったが、涸沢から上部の雪が多すぎて重い荷物をもってあがるのは厳しいと判断、涸沢にテントを置いて軽装で奥穂山頂をピストンすることにした。

ザイテングラート取り付きまでは雪上を直登し、それから上はザイテングラートと周りの雪の状況を見て判断しようということに。Kさんは靴底が不安があるけど、アイゼンをつけるとその心配がないから調子がいいようだ。途中、前穂北尾根の5・6のコルが見えるところで改めてルートを教えてもらう。上部にはテントも張れるらしい。前穂北尾根!かっこいいですな!

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と、雨が降り出した。それほど強くはないので雨具は出さず、いつものウィンドシールドのジャケットを着たまま登る。

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だいぶ登ってきたはずなのにザイテングラートの下部になかなかたどり着かない。そして、結構な急勾配。アイゼンの爪を利かせ、ピッケルも使って登る。雪面は、表面はやわらかいが、数センチ下は固く、ピッケルも石突き部分がちょっと刺さる程度。滑らないように最新の注意を払う。

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漸くザイテングラートの下部に到着。ここでKさんは雪面を直登、私はアイゼンをはずし安全なザイテングラートの一般道を登ることにした。ザイテングラート中部に差し掛かるとKさんはだいぶ上のほうに見えた。早っ!さすがだなー。

ザイテングラート上部に着くと意外にもKさんも今上がってきたばっかりといった感じ。だいぶ先行してたと思ったんだけどと言ったら、上部がかなりきつかったらしい、アイゼンだけでは駄目でピッケルも駆使して登ってきたらしい。アルパインのルートみたいだったといっていた。Kさんに唆されてついて行かなくてよかった(汗)

最後の詰めの部分はステップが切ってあったので私はそのままピッケルだけで登った。

穂高岳山荘到着。

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稜線に出ると西側から猛烈な風が吹いていた。上部はさらに暴風の様相だったので山荘の中で場所を借りて雨具を装着。お礼をいって外に出た。

山荘から最初のクサリ場でいきなり暴風雨に出くわす。
風に体を持っていかれないように気をつけて登れば大丈夫。視界も利いていたし、Kさんが後にいたので落ち着いて登ることができた。荒々しい穂高の稜線を越えていく。山頂直下、目の前に突然ジャンダルムが姿を現す。

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その距離、意外に近いのね。 いつの日か行きます!

山頂はすぐそこだ。

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そして、標高3190mの奥穂高岳山頂に到着。

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暴風雨のなか山頂を独占し記念撮影。Kさんに感想を聞くと、

K「天候はいまいちだけど、こういう天気は山ならではだし山っぽくていいね。」

と満足の様子。

周囲はというと、北は涸沢岳まで、東は前穂高岳、南はジャンダルム、西はちょっと遠くの笠ヶ岳まで見えた。

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北穂、槍が見えなかったのは残念だけれども、それは次回までのお楽しみということに。吊尾根も先にとっておこう。

束の間の余韻に浸っていると後続のパーティも到着。記念撮影を手伝って我々は先に下山した。

奥穂高岳→穂高岳山荘→ザイテングラート→涸沢

奥穂高岳山頂をあとにし、登ってきた道を引き返す。特に危険もなく難なく穂高岳山荘に到着した。山荘内にてしばし休憩。私はほっとココア、Kさんはコーヒーと3000mの高地でセレブ級の贅沢をする。のんびりまったり至福のひと時。が、時折外から暴風の音・・・

それじゃあ行きますかって事で腰を上げ、小屋を出てアイゼンを装着する。最上部は雪のステップ。下りなので慎重に降りる。ザイテングラートに差し掛かるとアイゼンが引っかかったりして危険と感じたので一時はずすことに。アイゼンで歩きなれてるKさんはそのまま降りる。

前穂北尾根、かっこよすぎて溜息が出る。

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ザイテングラート中部で雪面に出られるところがあったため、そこでアイゼンを再装着した。急斜面でアイゼンをつけていても時折ずるっとすべる。恐る恐る下降する先でKさんはずんずん歩いていく。っと、両足が滑ってそのまま3mほど滑落、幸い手に持っていたピッケルがそのまま雪に刺さって制動してくれたので体は止まったが、気持ちが一気に萎えた。それでも降らなければいけないので一歩一歩を慎重に降りるがまたもズリッと体制を崩しそうになる。ふと前を見るとKさんがはるか遠くに。

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これじゃ、一人で来ても変わらないじゃんよ・・・・

もうやる気ゼロ。動く気もなく、このまま惰性で降りると大変なことになりそうな気がしたので雪面横の岩に腰を下ろし、しばし気力の充電。降りしきる雨の中、ぼんやりと周りの風景を眺める。今朝は全ての山が見えていたのに、今はほとんど見えなくなっている。雨は当たり前に降っている。テンションさらに↓。

15分もたっただろうか。ふと下を見るとKさんが登り返している。あぁ、こっちに向かっているのか。上からは先の5人パーティの声がする。アイゼン装着してるようだ。すぐ近くには一人で上ってくる男の人が一人、いでたちから察するにどっかの小屋の人だろうか。

そろそろ降りるか、と腰を上げて再び歩き始める。まっすぐ下るのは怖いのでジグザグに降りることにした。と、これが正解。体制を崩さず降りることができる。漸くちょっとだけやる気を取り戻して下降再開。

で、何気なく、本当に何気なく上を振り向くと、

!!!

一瞬目を疑った。人が落ちてくる。滑落!?

5人パーティの1人が落ちたらしい。
何とかしなきゃと思っているうちに見る見る落ちてくる。近寄ろうと思うと同時に止めるのは無理だとも思った。滑落者に近寄ったのか、離れたのか多分両方だと思うが、躊躇している間に私のほんの数メートル横を雪との摩擦音だけを発して落ちていった。呆然と見送る私、と落ちていく軌道の先にKさんがいた。

G「Kさーん!!!」

Kさんが顔を上げる。

G「(滑落者を指差しとっさに出た言葉)落ちたーっ!!」

Kさんの思案の時間が一瞬あって、状況を理解したKさんは次の瞬間滑落者の軌道下に向かってくれた。滑落者はKさんのほんの数メートル手前で傾斜がゆるくなって止まった。Kさんが寄って行って声をかけている。

私も、やる気がどうのこうのといってる場合ではなく、怖さを押し殺してその場へと急いで下降した。途中、滑落者のポールを拾って降りて、たどり着いて大丈夫ですかと声をかけると幸い怪我もなく、普通に会話もできた。自身、かなり驚いたようだった。それはそうだろう、私の100mほど上にいるパーティの位置から落ちたとして、その後私の下200m近くおよそ300mほど落ちたのだから。幸いだったのは落ちたライン上に落石がなかったのと、すぐ脇のシェルンドに落ちなかったこと。そして、勾配が徐々に緩やかになっていたこと。 軽アイゼンにストックという装備ではこの坂ではどうにもならないということを思い知らされた。私たちはインターネットの事前情報を得ていたため、12本爪とピッケルを持ってきていた。

しかし、なぜ登りは緩やかな斜面を登っていたのに、下りは反対側の急斜面を降りようとしたんだろう。。。Kさんもそのことを疑問に思っていたらしい。
まぁとにかく、無事でよかった。

滑落者と付き添うKさん達

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テン場にもどると、雨に濡れたテントの撤収作業開始。パッキングも終わったところでヒュッテに幕営の許可証を返却し、嫁さんに無事に涸沢に着いたと電話した。
あ、そうそう、涸沢って携帯電話使えないのね、他は至れり尽くせりだったのでちょっと意外だったなぁ。

あのパーティはその後よほど慎重に降りているらしく、私たちが下山するときもまだかなり上の方を歩いていた。 皆さんも事前確認を行なったうえで出かけましょう。インターネットにもアイゼン・ピッケルが必要という情報は出ていたし、小屋に確認すれば教えてくれるはずです。 あと、何の根拠もない大丈夫だろうって判断はだめですね。

涸沢→大谷橋→横尾

涸沢をあとにして雪の道から普通の登山道に出たあたりから雨が本格的に降り出した。一時太平洋側に南下していた梅雨前線が北上しているらしい。が、登山者数パーティが登ってきていた。うーん、今朝までは天気がもっていたので残念だけど。。。お気の毒。

さくさくと高度を下げていくが、時折Kさんが靴底を固定している細引きを結びなおしている。よく、その靴で山頂まで行ったものだとつくづく思う。Kさん自身はあまり意に介していないように見えるからすごい。のか、鈍いのか正直よくわからない(笑)

それにしても腹減ったなぁ。
朝食後、行動食は取っていたものの昼飯を食べていないのでかなりばててきた。あー、カツ丼が食いたい!!絶対カツ丼!徳沢にあったかなぁ・・・・
もうカツ丼意外考えられなくなった。

大谷橋を過ぎ、右手に山頂が雲に隠れた屏風岩を見ながら歩く。
途中、行きでは見過ごしてしまった岩小屋。

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その昔、クライマーはここに寝たらしい。

ここで更なる問題が発覚。CTどおりに上高地に着くと最終のバスに間に合わない。最悪タクシーを使えばいいが、昨日の時点でバスの往復乗車券(片道1000円分)を買ってある、タクシーを使えばその1000円とタクシー代4000円が無駄にかかってしまう。とりあえず横尾まで行き、そこでKさんと作戦会議。2時40分横尾に到着。昼飯を食べていなかったので、二人ともかなりヘロヘロ、これではどうにもならんというKさんの判断でまずは行動食を補給して、一か八か上高地まで急いでみることにした。

横尾→明神→上高地

それぞれの小屋番と思われる方々は車で移動していく(ずるい!!)なか、我々は当然徒歩。まずは徳沢めざし歩き始めた。途中、橋を渡り反対側への道へと移る。会話もなく間に合うかどうかという不安もあり重い雰囲気の中、ただ黙々と歩く。私たちが歩いている道は徳沢川の道と比べて多少距離が短いはずだ。ただし、徳沢を経由しないので横尾→明神がかなり長く感じられる。雨もさらに強くなる。

G「明神まだっすかね~」

K「そろそろだと思うんだけどね」

と、右手の藪の中から突然子供のような声がした。じっと目を凝らしてみると、

クマーーー!!

小熊だ。どうやら倒木で遊んでいるみたい。その距離、100mもない。
「小熊の近くには母熊がいるから気をつけろ」という言葉を思い出して周りを見渡してみると案の定すぐそばに母熊もいた!
雨の音が私たちの気配を消してしまったようで、こちらには気づかず2匹仲良く遊んでいるではないか。Kさんは確認できなかったそうだが、あれは間違いなく親子の熊だった。写真を撮ろうにも振り向かれたら死あるのみなのでそそくさとその場を離れた。

あぁ、思い出した。黒戸尾根で聞いた声と同じだよ。。。2回連続で熊を見るとは・・・ついている・・・とはいえないな。

熊を見た私だけビビッて歩いているうちに明神に到着した。明神では一般のハイカーの姿を見つけて勇気付けられる。上高地までもう一息だ。再び橋を渡り明神から上高地へとひたすら歩く。もはや二人とも疲労困憊。足を出す行為そのものが億劫に思えて仕方がない。私は水溜りもお構いなしに歩くようになった。

K「きっともう少しだよ、この橋と川の感じ見たことある気がするから」

G「それって、、、遭難した人が『この木見たことあるからこっちだよ』っていって迷っていくのに似てますよ・・・」

いい加減うんざりしきった頃に漸く上高地の遊歩道に出た。

G「河童橋見ていきます?」

K「やだ、見ない」

即答・・・

まぁ、見るって行っても私の方が行かなかったですがね(笑)
でも結局ルート的に河童橋を通過してしまったので、記念撮影。

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大雨の河童橋は風情はないな。

涸沢(12:50)→横尾(14:50)→上高地(17:10)
あの状況で4時間20分は上出来。
バスターミナルに着くと沢渡行きの最終バスは10分前に出てしまっていた。が、ターミナルの人に聞くと目の前の新島々行きのバスに乗ってくれとのこと。助かった。濡れた雨具をさらにずぶぬれのザックにしまいこみバスに乗り込む。17時25分、上高地を後にした。
気温20℃にも満たない上高地で雨と汗で冷えた体に、追い討ちをかけるようなバスの冷房で疲労凍死するかと思った。

上高地→沢渡→帰宅

ほんの少しの乗客を乗せた観光バスクラスの大型バスにて上高地をあとにし、沢渡の駐車場に到着。ここも土砂降り。。。なのでそそくさと着替えを済ませてさっさと車に乗り込んだ。

さあ、帰りましょ帰りましょ。

18時に沢渡を出発し、途中渋滞もなく松本ICから長野自動車道→中央道でひたすら車を走らせる。途中双葉SAにて念願のカツ丼を食べエネルギーを回復した。小仏渋滞の情報が出ていたが食事をしている間に解除されたようで、そのあとも快適に走る。途中でKさんを駅に送迎し自宅に着いたのがちょうど22時30分だった。

ぶはぁぁ~、疲れた。でも目的?は(半分)達成できたのでよかったです。

あぁ、明日は仕事だった・・・・

反省点

行程
この行程、テントかついで1泊2日は結構きつい。1ヶ月のブランクもあって、黒戸尾根ほど体力は使わないけど2日目の横尾→上高地は本当にグダグダになってしまった。それとバスの時間制約があるため、行動計画ももっと注意が必要だった。今回の山行、当初は吊尾根を通って岳沢経由で上高地に下山予定であったが、計画変更と出発時間が遅れた時点で全工程の時間を再チェックするべきだった。最近の参考ではCTをあまり気にせず歩いていたせいか、その注意がすっかり抜け落ちてしまったんだな。

ピッケル
ピッケルはサイズ的には問題なかった。ただこの長さだとやはり平地で杖のような使い方はできない。もっぱら急斜面での支え的な使い方。あと、岩稜地帯でも支えとして使えた。この場合はもっと短くてもいいと思った。

雪上歩行
まだまだ修行不足。Kさん曰く、下りで腰が引けてなければ転ぶことはない。私は転んだので腰が引けていたのだろう。

体力
前回参考からちょうど1ヶ月のブランクがあった。結果、コテンパン・・・。日々の努力の積み重ねが重要。でも、しばらくは無理。
あとでまたやり直しだ。

→翌日2010年7月12日、上高地は前日からの大雨のため終日閉鎖になったそうです。あぁやっぱり、かなり降ってたのね。帰ってこられてよかった。

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